ちょっと古い記事ですが、2000年1月の佐賀新聞の<なるほど法律相談>というコーナー記事を引用紹介します。
基本的な知識ですから、何をするにしても知っておいた方がいいと思います。
Q 15年以上前に消費者金融からお金を借りたことがあり、返済を続けていましたが、借りてから2年後に転居してからは、返さないままになっていました。先日、その金融業者から自宅に督促状が届き、借りていた額よりも多い金額を支払うように求められました。支払わなければならないのでしょうか。
A 権利を行使することができる時から10年(会社など商人から借り入れた場合は5年)を過ぎた債権については、時効を援用することで、支払い義務が消滅することが民法で定められています。過去に裁判などがあった場合は、判決の確定から10年となります。
ご質問の場合、最後の返済から10年以上が過ぎていますので、時効期間が経過しています。したがって、時効援用をする旨を債権者に通知すれば、支払う必要がなくなります。配達証明付きの内容証明郵便を送るのが確実な方法です。
Q 夫が私に無断で、消費者金融に電話を掛けたところ、1万円を振り込むように言われたため、1万円を振り込んでしまいました。この場合でも時効を主張することができますか?
A 時効には中断事由というものがあり、裁判上の請求や返済によって、その時点から改めて時効の期間がスタートすることになります。また、時効期間が経過した後に債務を承認した場合には、債務者が時効援用することは許されないとの最高裁判所判決があります。
ご質問の場合、時効時間が経過していますが、相談者の夫は債務者ではありません。したがって、承認があったとはいえませんので、時効中断事由には当たらず、時効援用が可能と思われます。また、債務者の無知に乗じて、少額の金銭を支払わせて、時効を中断させようとした場合には、時効援用が認められるとした裁判例もあります。
借金の返済でお困りのときは、お近くの弁護士または弁護士会にご相談ください。
(みやき町 弁護士 服部晴彦)
今回紹介した記事は1月時点のものであえて触れられていないと思いますが、実は、この2020年4月1日から商法が改正になり、改正の中に時効の期間も含まれています。
補足で説明すると、今までは、個人間の貸し借りは10年、飲み屋の付けは1年など、今までは、時効の期間ががバラバラでしたが、今回の商法改正で全て原則5年になります。
その他については、今までと同じように、追認で時効中断も認められますし、債務者名義を取得れると時効は10年となるところも今まで通りです。
支払い督促を無視するなどすると、債務者名義の取得が認められるため時効は10年です。
10年ごとに債務者名義を延長されると、時効は事実上なくなったのと同じことになります。